蝉時雨


蝉時雨をききながら

夏という季節の不思議さを思う

照り返す日差し

栄ゆる緑

けだるい午後に

白粉花が濃く香る

流れているはずの時間は

あたかも止まっているかのよう

いったい私は
存在しているのかどうか

ふと心配になる

心は勝手気ままに体を離れ

遠い夏の日へと飛んでいく


これは

私でない

誰かの

記憶


そうして
まるで
長い夢から覚めるように

夏の終わりがおとずれる


蝉が鳴いている

たぶん君らのせい

そうやってあの夏もその前の夏も
ずっとずっと前の夏も

蝉時雨が















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