「誰にも知られずに」・・・ある特攻隊員の遺書(2)


美しい祖国はおほらかな益荒夫を生み

おほらかな益荒夫は、気高い魂を祖国に残して

新しい世界へと飛翔し去る

「現在の一に最善を尽くせ」
「只今ばかり我が生命は存するなり」とは
私の好きな格言です。

生まれ出でてより死ぬ迄
我等は己の一秒一刻に依って創られる人生の彫刻を
悲喜善悪のしゅらそうを刻みつつあるのです

私は一刻が恐ろしかった。
一秒が重荷だった。
もう一歩も人生を進むには恐ろしく
ぶっ倒れそうに感じたこともあった。

しかしながら、
私の二十三年間の人生は
それが善であろうと悪であろうと、
悲しみであろうと、
喜びであろうとも、
刻々刻みこまれてきたのです。

私は 私の全精魂をうって
最後の入魂に努力しなければならない。

私は誰にも知られずにそっと死にたい。

無名の幾万の雄志が大陸に大洋に
散っていったことか。

私は一兵士の死を
この上もなく尊く思う。

海軍少将 溝口浩二郎 命 (二十二歳)




昭和20年6月22日 菊水十号作戦
鹿屋から沖縄周辺へ出撃、体当たりを決行。散華。





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