【まこと(真・誠)の日本婦人が日本を救う】
内憂外患である現今が戦後最大の国難であることは間違いない事実です。
私の中にある志士的気質は、実は物心つく頃には目覚めており、
十代半ばに達する頃には、心の奥底で
「日本を、世界を、なんとかしなければ」という想いを抱いていました。
ただ若い私は過ちを侵した。
それは「女の役割をないがしろにしたこと」です。
その結果、わたくしは天から厳愛を受けました。
つまり親が子を厳しく叱るように、天が私を厳しく叱りつけたのです。
以来、戦後世代で有りながら、戦後の男女平等思想と、
それによる女子教育・・・つまり
「男らしさ」「女らしさ」を否定するような風潮は、
日本滅亡の道に他ならないと確信し、
本来、日本が大切にしてきた婦道というものを学び、
日々の来し方に生かしてきました。
最初に、婦道を「女武士道」として世に問うた拙著
『今も生きる武士道 武家の女性の精神を貫いた祖母の教え』(講談社α新書)を
出してから、気づけば今年で十年です。
世のなかがますますジェンダー的になっていく一方で、
私の主張する日本婦道というものが、少しずつではありますが、
支持されてきているという実感があります。
ただ、それでも、まだまだ道は遠い。
あまりにも遠大すぎるのです。
とにかく女子教育は、さらに望ましくない方向へと突き進んでいるし、
残念ですが政策もまたそうです。
そういう時、いくつか勇気づけられる言葉があります。
下田歌子女史と安岡正篤先生の御言葉は、
とりわけ私の支えになっているのです。
ここでは安岡先生の『興国と婦道』から引用します。
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造化の相対的原理-陰陽の作用に依って、陽性である男子は、外に分化発展しようとする。活動的である。理智に富み、覇気があって、才力に勝って居る。それだけ、過てば人世に疲れ、殺風景で、争い易く傷つき易い。
之を救うものは女子である。
女子は陰原理の特徴として統一含蓄的である。貞静を主とし、情操に富み、内省的であって、才よりは徳に生くべきものである。
世間の活動に疲れ、理窟に荒み、覇気と才力との競争怨嫉に悩む男子は家に帰って此の婦徳に忽然として救われ、ここに新たな生活力を補われることができる。
故に名利の欲が強く、理屈っぽく、負けず嫌いで、才走った女ほど男子にとって迷惑なものはない。さりとて女子に世間を知るな、学問は要らぬ、技芸も無用だというのではない。女子には女子の世界、学問芸術がなければならないのである。
今や我が国は深刻な内憂外患の為に物情恐々たる有様である。
日本のこの窮迫は換言すれば男子が疲弊していることである。
之を救う何よりもの大きな力は日本婦道の発揮である。
しかるに識者は(中略)この大事な日本婦道の発揮にとんと心づかぬようである。
灯台もと暗しと言うべき沙汰か。
現に依然として女子教育は軽薄な欧米模倣
覚束ない男性追随をやっているではないか。
男のすなる空理空論を性懲りもなく宣伝しているではないか。
破廉恥な話を満載し、虚栄をそそのかし
不義をあおるような婦人新聞雑誌が横行しているではないか。
今日の婦人は男子ために競争者であっても、内助者にはならぬ。
ともすれば獅子身中の虫たりかねぬ傾向にあるを痛感する。
これ実に恐るべき人生の荒廃であり、国家の大害である。
日本女性が、国家を愛し、大義を思うて、己を慎み、貧に安んじ、
男性を励ますことができたならば、
日本の世風は一変して、国運は隆々として興るであろう。
(※著者により読みやすい表記にしています)
『国維』昭和八年五月 第12号掲載『興国と婦道』より抜粋
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こういうことを男性が述べると、
たちまち「男尊女卑」だと騒ぐ女性は、
まったく日本の「もうひとつの歴史」である「女性の歴史」
それも、戦後に「つくられた」女性史を真に受けて、
あるいはそれさえもきちんと学ぶことをせずに
ただマスコミが先導する世の中の風潮に乗っかって
無責任なことを叫んでいるに過ぎず
およそそうした姿は、「美しくない」。
女は、常に美しくあらねばならない、女の美学というものを
決して忘れてはならないものですが
その美の方向性も極めて稚拙で外見的なところで留まっています。
これでは真の知性とは言えないのです。
かつては女性でも四書五経を読み、
また、女書というものを心の糧としたものですが
今や、そうした古典を読む女性がどれだけいるでしょうか。
古典を古くさいものとしてしか受け止められず
そこには未来永劫変わらぬ真理があるということを汲めない。
これは実に残念なことで、
せっかく日本の女に生まれてきたのに、
それによる幸せを半分以上放棄しているようなものだと私は思っています。
そうして女性が幸せでないと(真に幸せでないと)
めぐりめぐって世の中は暗くなるのです。
本当の国難は、実にここにあるのです。
安岡先生は常々こう仰っていたという。
「誰か本当の女子道徳というものを著したら、
満天下の男性をうならせることができると思うのですが、
まだ一冊もないですね。
私もなるべくやってみようと思っているのですが、
なかなか時間がない。
みなさんも一つ、誰かやってみるとよろしい。
これは天下国家を益すること
甚深微妙なるものがあると思います」
わたくしは女の立場から
女性による女性のための女子道徳が必要と
信じています。